第1章 消えたのも 託された思い*
「なんか肉まんとか、食べていくか?」
詠流は、近くに見えるコンビニを指差しながら財布を取り出す。
「いいの??」
私の問いかけに、寒いしなと詠流は白い息を吐く。
「やったぁ。ちょうどあったかいの食べたいと思ってて。ねぇ詠流、どうして県外まで出て行ってバレーをしないといけないの?」
何気なく聞いた疑問に、詠流の表情が引き締まる。
「彼奴らとさ、全国の舞台で戦いたい。ここだと、全国では戦えないから。それだけだ。」
雪の様に詠流の瞳は、綺麗に輝いていた。
「あ、んじゃ買ってくるから待ってろよ。」
詠流は、コンビニの中へと消えた。
どうして県外までと、思わずにはいられなかった。
彼奴らって、一体誰のことを言っていたのだろうか。
そこまでするのか分からなかったのだ。
「寂しいよ…。」
置いてかれた気がして、とても寂しく感じる半分嬉しいという感情ももちろんある。
悶々と考えながら、詠流を待っていた。
だからー。
私のことを呼ぶ、詠流の声が聞こえなかった。