第5章 単細胞生物
「はぁ、はぁ…。」
荒く息を繰り返す依流に、澤村はスポーツドリンクを手渡す。
「すまん、思ったよりハードな内容になってしまって。」
「い、いえ…。ありがとうございます。」
依流は、スポーツドリンクに口をつけた。
そんな姿を見ながら、澤村の頭の中は疑問で埋め尽くされていた。
ー彼は一体なにものだ。筋力は無いが、一つ一つの動きが…。似てるんだよな。他のメンバーに。しかも、腕・指の使い方がまるでバレー経験者のようだ。しかし、筋力がないのは運動部ではなかったということで…。ー
悶々と考え込む澤村は、がらりと開けられた扉の音で現実へと引き戻された。
「キャプテンっ!勝負させてください」
「俺逹対先輩逹とで‼︎」
「ちゃんと協力して戦えるって証明します‼︎」
これが、翔陽と飛雄の二人が考えた作戦である。
そんな、申し出に三者三様の反応する。
ひときわ険しい顔をしたのは、他でもない澤村であった。
「負けたら?」
先ほど見せていた表情とは、打って変わり冷めた目で問う澤村に依流は恐怖心を感じた。
「どんなペナルティでも受けます。」
「ふーん…。丁度いいや。お前らの他に、数人一年が入る予定なんだ。そいつらと三対三で試合やってもらおうか。」
そして、澤村は最後につけたたした。
「お前らが負けた時だけど、少なくとも俺逹三年が居る間、影山にセッターはやらせない。」
そして、扉は再び閉じられ。
午後7時30分のことだった。