第4章 烏野高校排球部
そのあとも、翔陽は続ける。
「烏野のエースになってみせますっ‼︎」
その言葉は、飛雄にあの決定的瞬間と感情を呼び起こした。
心の隅にかかっていたブレーキが、ぷつりと音をたて切れた。
「お前、”エースになる”なんて言うからにはちゃんとうまくなってんだろうな?ちんたらしていたら、また三年間棒にふるぞ。」
翔陽の顔が変わる。
「あ、あの二人とも止めなよ……。」
まずいと思い口を挟むが、依流の声は届くことはなかった。
「今までの全部…、全部無駄っだったみたいに言うなっ‼︎」
澤村は、深い溜息をつき仲裁に入る。
「お前らさ、もう敵同士じゃないってわかってる?仲間だって自覚しなさいね。バレーボールは、繋いでナンボっ!大事なのは連係なんだからーー。」
そんな澤村の声さえも届くことはなく、嫌な空気が体育館内に広がり始めた。
「や、やめろよ…。」
飛雄の方に寄り添い止めようと、依流は手を肩へと伸ばす。
「邪魔だ。」
しかし飛雄は、その手を乱雑に振り払われバランスを崩す。
「おと、大丈夫か?」
バランスの崩した体は、澤村が優しく受け止めてくれた。
「す、すんません…。」
「いや、謝ることないって。えっと…。」
「あ、えっと、神川詠流。」
「そっか、詠流か。」
そんなやりとりをしている間に、話はあらぬ方向へと進んでいた。