第1章 せめてこの日だけは(椎名翼)
「ホント、恥ずいからさ!後々自分が見たら絶望するからさ!だからあたしが写ってる写真全部引き取らせてくれ!」
「嫌だって言ってるだろ?名前も割としつこいんだね?そのしつこさを、もっと他の分野に活用出来ないの?あーヤダヤダ、これだから一点張りのバカは困るんだよねぇ」
「一点張りはおめぇだよ!」
これじゃあラチがあかねーなと思ってると、椎名が少し寂しそうな表情をした気がした。
だが、すぐにいつもの企んでる顔に戻って、何やら手を差し出してきた。
「椎名?この手はなんだい?」
「お前、まさか今日が何の日か分かってない?昨日言ったばっかなのに忘れる程の脳みそだったの?つくづく名前には驚かされるよ全く」
「いやーちゃんと覚えてるよ?あたしは、その手は何かを聞いてるんじゃねーか」
「だから、誕生日プレゼントは?」
「椎名、お前まさかさ、あたしに誕プレせしめようと思って今日呼んだのか?」
「んー、半分当たりだけど半分はずれ。ていうか、早くちょうだいよ」
皆さん、どう思われますか?
普通、自ら誕プレ寄越せと言いますか?
とてもじゃねーけど、少なくともあたしにそんな勇気はありません。
それとも、こっちの世界がそういう文化で、あたしがイレギュラーなのでしょうか?
「で?プレゼントは?」
「はぁ……はい。椎名、誕生日おめでとう」
「サンキュー」
椎名が袋の中身を空けると、飛葉中のユニフォームのカラーディングを模したミサンガが入っていた。
「これ、名前が作ったの?」
「まぁ、作ったっつーか生成したっつーか………まぁ、自然エネルギーが介しやすいような構成にしたし、一応念も込めてるから」
「へぇ……どんな?」
椎名が、何か期待したような目であたしを見つめてきた。
うーん、改めて言うとこっぱずかしいが………
「椎名が、幸せを感じれて、世界で羽ばたけますように、な」