第5章 意外な策士(緑川駿)
「名前さーん!」
今度は自販機で飲み物を選んでいたら、やってきやがった。
「何だ?何か奢れってか?あと降りろ」
「違うよ!名前さんを見つけたから来たんだよ!っていうか、俺そこそこ任務で稼いでるから奢るよ?」
何故年下に奢られなきゃなんねーんだ。
幸い、近くに人の気配はねー。
年下に払わせるわけにもいかず、仕方なくあたしが奢る事にした。
まぁ、この辺の通路は人通り少ねーし、万が一誰かに見られてたら、「あれだけ嫌がってた名前が緑川に奢ってる」と騒ぎになり、変な誤解が起きるだろう。
それは困る。ホントに目立つのは困る。
あたしは匿ってもらってる立場だからな。
「へへっ、名前さんと二人っきりなんて嬉しいなー」
「……楽しくはないだろ?あたしといても」
「楽しいよ!俺名前さん好きだから!」
自分が思っている事を告げたら、緑川もよく分からん事を返してきた。
というか、理解すべきではないと心のどこかで思っていた。
だから、気づかなかった。