第5章 意外な策士(緑川駿)
「名前さーん!」
後方から、いつからか懐かれるようになった奴の気配がした。
振り向く事なく前に進んだが、そいつはお構いなく背後からのしかかってくる。
緑川駿。
A級4位・草壁隊の隊員だ。
「重い離れろ緑川」
「別にいーじゃん!俺名前さん好きだし」
最近、本部に来る度にこんなんだ。
こいつに見つかったら、通路だろうが食堂だろうが、終いには本部外でも背後からのしかかってくる。
ちなみに、今はロビーにいる。
「何だ?またやってるのか?」
「飽きないなー緑川も」
緑川と(あたしはそんなつもりはねーが)じゃれていると、太刀川や出水と遭遇した。
「あたしは反抗してんだけどな。目立ってお前らみたいな奴が寄ってくるから困る」
「名前さん何かそれ酷くない?まるで虫みたいな言い方」
「お前は少なくとも蝿だろ」
「ぷっ、ははははっ!太刀川さん蝿とか!そんまんま過ぎだろ!」
あたしの言動に、出水が何か爆笑してきた。
背後には相変わらず緑川が乗ったままだし、蝿川は無駄に泣きそうになっていた。
「名前さん『蝿川』って表記もヤメテ(泣)」
「仕方ないよ、蝿川さん」
「そうだぜ、蝿川隊長」
「餅川でもいいぞ」
「お前らぁ!!」
その後、出水と緑川は蝿川に追いかけられた為、あたしの背中はようやく軽くなった。(ちなみに、あたしの方が年上な為、あたしは追いかけられる事はなかった)