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短編集【ジャンプ】

第1章 せめてこの日だけは(椎名翼)



椎名に指定された時間よりも早くは来た。
だが、人ん家の前で何分も居座るのは流石にアレだと思ったので、近くの木陰で待機していた。
5分前にインターホン鳴らせばいいだろう、多分。




「だが、この時期にこっちに残るなんて思ってなかったなー」



今回、この世界に来た目的は、ちゃんとストーリー通りに展開するか、また、進行の大幅な妨げとなる存在の排除・事柄の阻止だった。
まぁ、『大幅な妨げ』と規定されたのは、任務を遂行するあたし自身がストーリー進行に支障をきたしてしまうからだ。
一応、あたしが元いた世界で認知されている分のストーリーがほぼ完了しているから、正直あたしがこの世界にいる理由が本当はない。
時空転移とかそんな異常でこっちに入ってきたイレギュラーの対応もしてしまった。
それでもこの世界にいるのは………






















「僕、家の前って言ってたよね?僕が言った時間より早く着いたからってこんな所で時間潰すとか、お前ホント暇人だよな」
「椎名!?え、時間まだだろ?」
「名前が指定した時間に遅刻する訳ないし、大体15分以上早く来る程のマジメちゃんだろ?どうせその辺にいるだろうと思って探してみれば、やっぱりいたし」
「お、おぉう」


まさか椎名が家から出てくるとは思わなくて。
でも、ぱっと見の気配は、何処かへ出掛ける様子でもなかった。



「椎名?どっか行くわけじゃねーのか?」

「は?」

「いや、お前に呼び出される時は、大体出掛ける時だったからさ」

「…………別に、何処かへ行くつもりだった訳じゃない」

「おぅ」

「ただ…………」

「ん?」

「………………いや、やっぱ何でもない。ほら、さっさと僕の家に入るよ!」

「お、おぅ」


少し考えた素振りを見せた椎名だったが、顔を背けたと思ったらいきなり腕を掴んで歩き始めた。
うーむ、さっぱり分からんな。


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