第2章 事の始まり
「そんなに不服なら、ちょっと俺の実力みてみる?」
「な、湖賀くん」
驚く雪男を尻目に、ジャケットの胸ポケットから簡易の召還陣が描かれた紙を取り出す。
「『戦神(いくさのかみ)にかしこみかしこみ申す。我が願い成就せんと、遣いの者、御遣わしたまえ』」
稲妻のような強い光が発せられ、気づいたら大きな白い虎がしゆうの隣に堂々とした姿で立っていた。
「俺の使い魔。睡蓮」
「神使ですか……上級の使い魔ですね」
しゆうの腕に頭をこすりつけて甘える様は猫の様だが、大きさも顔の形もどう見ても虎だ。顔の周りを歌舞伎のような赤い線で化粧が施されている。
「どう? まだ気に入らない?」
よろしく、と言いながらしゆうは召還に使った紙を半分に破る。虎はすぐに消えてなくなり、しゆう以外の人は驚いた表情をしている。いち早く我に帰った雪男が授業を始めようと声をかけ、生徒もそれにならって授業が行われたが、生徒はちらちらとしゆうを見て、何か考えているようだった。