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目の前の憂鬱

第3章 影の誘い


「二人組を組んでもらうんですが……湖賀くん」
「へ?」
内容を半分聞き流していたしゆうは名前を呼ばれて間の抜けた返事をしてしまった。
「湖賀くんは、フェレス卿から任務を別に与えられています。これを」
雪男に渡された蜜蝋で封がされている封筒を携帯のストラップとしてつけていた小さいマルチツールで開ける。中に書かれた内容をざっと読み込む。
「……分かりました」
「僕たちはフェレス卿が君に与えた任務について教えられていないんだけど、どんなモノか教えてもらえるかな」
「ええ、もちろん」
表向きは遊園地内の結界の穴を見つけること。本当の任務の目的は奥村燐に対して、ある実験を行うのでそれに伴う被害を拡大しないようにという内容だった。二人の引率の講師には分からないよう表向きのやつだけ見せる。
「遊園地に結界の穴が見つかってしまったようなんですが、細かい所までは特定出来なかったようです。コールタールが多く沸いているところは穴の可能性が高いそうなのでそこを探すようにと」
「君だけで大丈夫かね?」
「もし危ないと判断したら、すぐに連絡しますし、フェレス卿も候補生でも大丈夫だと判断なさったのでは」
「分かりました。湖賀くん、無理をしないでくださいね」
他の候補生は1人単独任務を言いつかったしゆうに不満の声を漏らしたが、引率が認めたのでしぶしぶといった風だ。解散、と言われ各々散り散りになる直前に、しゆうは杜山に声をかける。
「榊が欲しいの?」
「ちょっとね。できなきゃそれはそれでいいんだけど」
「ちょ、ちょっと待ってて…すぐ出せるよ」
杜山の使役している緑男から榊を出してもらい、片手で持てるほどのそこまで大きくはない榊の枝をいくらかもらい受けると杜山は首を傾げる。
「でも、どうして榊が必要なの?」
「まぁ、ちょっとね」
ありがとう、奥村くん待ってるよ、と声をかけると杜山は慌てて奥村燐の方へ走っていく。しゆうはそれを見届けると逆方向へと歩いていく。
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