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目の前の憂鬱

第2章 事の始まり


「はいよ。……メフィスト」
真剣な声色で呼ばれたメフィストは顔を上げて立ち上がったしゆうを見る。
「どうしました、しゆう」
「もし、俺の力をあてにしてるなら、期待しない方がいいと思うぞ」
「……よくよく、肝に命じておきましょう」
ひらひら、と手を振ってしゆうはメフィストの部屋から出て行った。
「私がそれだけの理由で、アナタを育てたりしませんよ、しゆう。古より続く戦神の血統にして、ゲオルグの血を引く子どもよ」

「皆さん、今日から新しく入塾してきた仲間を紹介します」
祓魔塾で、魔法薬学の講師をしている奥村雪男の紹介で、しゆうは塾生の前に立つ。つい2時間くらい前に渡された資料を思い出しながら、塾生の顔を見ていく。
「湖賀 しゆうです。よろしく」
「先生、質問があるんですけど」
挨拶して早々にきつそうな面立ちのツインテールの女子が手をあげる。
「神木さん? どうぞ」
「彼は候補生扱いなんですか? 私たちはこの間、承認試験を受けてますけど、彼は受けてないんじゃないですか」
神木と呼ばれた女子生徒に雪男はにっこりと笑いかける。
「それには心配及びません。彼は一週間前まで正十字騎士団の南米支部にある祓魔塾にいましたから。彼はそこで承認試験を受けています」
ですから、正式な候補生ですよ。と雪男が説明し、神木は不服そうな表情を浮かべながらも席に座り直した。それを見て、しゆうはにっ、と口角を上げる。
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