第2章 事の始まり
「おや、分かりましたか」
「まぁ、なんとなくだけど。素人じゃないなって感じがしたやつがいたのよ。気配の殺し方とかさ」
もぐもぐとおにぎりを食べながらしゆうは言う。1つ目のおにぎりの具はどうやら梅干しだ、かなり酸っぱい。目をぎゅっとつぶり酸っぱさをやり過ごす。
「私から送り込んだ、生徒として正規の生徒を見守っている方はしゆうの他にもう1人います。後、恐らくは本部からの内偵と思われる方が1人。あまり詳しくはお教えできませんよ。調査中ですから」
「別に教えてくれなくていいけど」
1つ目のおにぎりを完食したあと、お味噌汁に口をつけながらしゆうは言う。意外な一言にメフィストは興味深そうに左眉がぴくり、と動いた。
「おや、なぜです? 知りたいのでは無いのですか」
「別に、知ったところで協力なんか出来ないし。メフィストのことだから俺とは違う役回りだろうし」
役が違うのに協力なんて出来ないだろ、と一蹴してしゆうはもうひとつのおにぎりに手をつけた。
「よく分かりましたね」
「メフィストに聞くまでは半信半疑って感じだったけど、それだけ分かれば十分だし。俺、協力とかするの苦手だしな」
もうひとつのおにぎりは鮭を解した身が入っている。程よいしょっぱさが絶妙だ。
「明日は、『候補生』として任務がありますから早く休みなさい。この任務は長期なんですから、最初から気合いが入っているとバテてしまいますよ」
「りょーかい。風呂はいって寝るわ」
残っていたおにぎりと味噌汁の椀を空にして、しゆうはソファーから立ち上がる。そのまま、しゆうはメフィストの前へと歩いて行き、そのままジャケットをつかんで顔を近づける。