第2章 事の始まり
ジャラジャラと沢山の鍵を見て、しゆうはため息をひとつ。奥村燐の監視役というのはなかなか制約が多いことが今日1日でよく分かった。
「おかえりなさいませ」
ベリアルにジャケットを預ける。歩きながらしゆうはベリアルに尋ねる。
「メフィストは?」
「執務室でお仕事をなさっておりますが」
「そう」
「しゆう様のお夕飯はどうなさいますか」
「軽く食べる。メフィストと話があるから持ってきて」
「かしこまりました」
ベリアルがしゆうから離れていく。しゆうはそのまままっすぐメフィストの元へ行く。執務室の前の扉まで行き、ノックをしてからしゆうは中に入った。
「おや、おかえりなさい。今日はどうでしたか」
「どうもこうも、こんなにやりにくいのは初めてだっつうの」
ソファに乱暴に座りこみ、しゆうは足を組んだ。
「祓魔塾の講師連中は俺のこと知らないの? 奥村雪男はまだしも、他の講師も普通に南米から来た候補生だって思ってるけど」
「教えていませんでしたか? アナタ、一応日本支部の支部員ということになっていますけど、アナタの上司は私。それに、アナタ日本支部の方と任務一緒になったことないでしょう。常に海外任務に行かせるか、単独任務にしていましたから。ですからアナタのことを知っているエクソシストは日本支部ではほんの一握り、上級エクソシストだけですよ。祓魔塾の講師は今、中級エクソシストの方々にお任せしていますからね、知らないのも仕方ないでしょう」
素知らぬ顔で述べたメフィストに疑わしげな表情をしゆうは浮かべたが、すぐに普段の表情に戻って話を続ける。
「それは分かった。奥村燐、雪男兄弟を観察したけど、特に怪しいところはなかったぞ。とはいえ、燐の方はありゃ意気込みだけは立派だがアイツかなりバカだろ」
呆れた表情でメフィストを見やるしゆう。メフィストもそこは同意した。
「あと、俺の他にも生徒じゃないやつがいるよな」
ベリアルがやってきて、しゆうの前のテーブルにおにぎりが2つ乗った皿とお味噌汁のお椀が置かれた。おにぎりの皿には沢庵が2切れほど乗っていて、美味しそうだ。しゆうは早速置かれたおにぎりの1つを手にとってかじりつく。