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贈りものを君に

第3章 差し伸べられる手




「またケガをしたの?おっちょこちょいね」

はケガをする度に保健室へ行く。女医はきっとすべてを悟ったうえで処置を施している。この女医も担任も、今あるいじめという現状から目を背けているのだ。

「…すみません」

口の端を切り、擦り傷を何か所も作り、青痣を腕やら背中やらに作る等異常だった。一人誰かが気にかければは救われるだろうにそれを誰もやろうとはしない。それがこの学校の流れ。
処置を施され湿布などを張り終わったは頭を下げてSHRに向かう。まだこれは朝の出来事だ。これから嫌というほど嫌がらせが続くのだから呆れてなどいられない。



「本日は転校生を紹介します」

担任が教壇に立ち笑顔でそう言った。それと同時にざわつく教室内。かっこいい男の子だったらいいな、とか、可愛い女子だったらナンパする!などという声が上がる中、は机に伏していた。

「花京院典明です」

きゃあっと教室内の女子は悲鳴に似た歓声を上げる。
そういえば、とはふと顔を上げた。まだ筆箱を出していなかったかとスクールバッグに手を伸ばし、筆箱を抜き取る。その時手が滑って床に落としてしまった。
面倒だな、と思いながら椅子から立たずに手を伸ばすと誰かが先に筆箱を拾い上げた。

「はい」

「…どうも」

拾い上げたのは転校生の花京院だった。は彼の顔をみて朝見た奴だと認識した。彼の席はの斜め右前の席で窓際から二列目だ。

「よろしく」

そう言われ、は軽く会釈をしてまた机に伏した。
その後の休み時間では花京院の周りには女子たちが群がり、質問の嵐と化していたがは見向きもせずに授業の準備を始めた。




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