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贈りものを君に

第2章 痛みの叫び



静かなこの地域の学校に俺は通っている。
普段何もなけりゃしんと静まり返っているし、何かあっても特別大騒ぎするような町じゃあない。だから騒がしくなくて好きだ。
だが、一つだけ気がかりなことがある。俺の幼馴染のについてだ。
アイツは幼い頃から一人っきりで何もかもをしようとしてきた。俺としては頼ってもらいてえところもあったから話しかけていたつもりだったが、は頼るのも頼られるのも好かないヤツで、何をしても一人でいようとした。
だから

「邪魔!」

思い切り罵声を浴びせられたり

「ひっこんでてよ」

思い切り腹を蹴り飛ばされても弱音ひとつ吐かなかった。
決して強いと尊敬できねーくらい酷いモンだった。俺が止めようとすればは余計な事をするなというような目でみてくる。アイツにはアイツなりの考えがあるんだろうと思ってきたが、高校生になって酷さは目に見えて悪化している。
…どうすればアイツを救えるのか、俺はずっと考えてきた。ガキの頃から、ずっと。
こっちから手を伸ばせば払い、放っておけば悪化し、声をかければ睨む。まるで一匹狼だった。孤立してしまった狼が寄ってたかって人間に銃で撃たれているようで見ていられなかった。
何度も助けるチャンスはあった。なのにアイツはそれを望まなかった。
一言、たった一言でいい。

『助けて』

その一言があれば俺だったなんでもしてやる。
今迄を散々殴ってきた女子生徒を病院送りにしてやるし、見て見ぬふりをしてきた教師共を全員ぶっ殺してやる。なのに、なのにアイツは何も言わない。
言いたくても、言えないんじゃあねーのか。
俺にはどうすることもできないだけの世界を誰かにぶっ壊して引きずり出してきてほしかった。もう俺じゃあ何もできない、珍しく絶望を味わった俺はアイツの傷付いていく様から目をそらす。

「…また、か」

また今日もは泣き声一つ上げずに醜い女共から殴られている。
どうすればいいか、俺にはもうわからねぇよ。
ストレス解消のために吸っているタバコも、何の意味もなさずに灰だけを落としていった。



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