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贈りものを君に

第2章 痛みの叫び



今日、僕は転校初日の登校だ。
風の噂でここの学校には僕と同じようにスタンドを持つ男がいると聞き、親元を離れてそのことを研究するために来た。
東京都内の割に自然が豊かなここは高いビル群もなく見晴らしもいい。


「…?」

神社を通り過ぎ、暫く歩いていると罵声に気が付いた。その声は女子のもので、数人で言い合っているようだ。喧嘩の類だろうとほんの少しの興味で物陰からのぞいてみる。
と、そこには目を疑うような残酷な光景が繰り広げられていた。

「また来たの?気持ち悪い」

「懲りない馬鹿ってこういう人の事を言うのね!」

そう言っている女子生徒と、言われている女子生徒がいる。所謂『いじめ現場』を目撃してしまったのだ。
こんなに穏やかな町並みなのに、と勝手に思い込んでいたのは僕だがあまりにもその光景は違和感がある。とても同じ空間とは思えなかった。
暴言を浴びせられ暴力を振るわれている生徒は全くの無抵抗だった。苦しんでいる表情すらなく、ただそのすべての行為を受け入れているように見えた。毎日のように繰り広げられている行為なのかもしれない、と思った僕は少しでも妨害できればいいとこっそりスタンドを這わせていく。
だが違和感に気が付いた。その時にはすでに遅く、地表を這っていたハイエロファントは金縛りにあったかのように動かなくなり、僕の体全体は電撃が走ったように強張った。

「ッ!」

暴行を加えられている女子生徒と目があった。それと同時に金縛りが解け、僕の体は自由に動くようになる。いったいなにが起こったのかわからず、その女子生徒から目を離せなくなった。

「…何をしているんだ」

正気を取り戻した僕はすぐにその女子生徒たちに声をかけた。すると逃げるように散っていき、怪我をして座り込んでいる女子生徒が置き去りにされる。

「大丈夫かい?」

手を伸ばせば掴んでくれる、それが当たり前だと思ったのに彼女は僕の手に触れることなくスッと立ち上がった。身長は160㎝前後と言ったところだろうか、日本人らしい黒髪が艶やかで口から血を流しているのにそれが美しいとまで感じた。

「これを」

常備していた絆創膏を渡そうとすると僕の横を通り抜け、荷物を拾って学校の方へ歩き出してしまった。不思議な女子生徒もいたものだ、この行為になれているのだろうか。いや、慣れていいものじゃあないだろう。


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