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贈りものを君に

第2章 痛みの叫び




もう何度目だろうかと赤くはれ上がった頬を撫でる。
最早痛みを感じなくなったそこに手を当てても感覚がほとんどない。神経がイかれてしまったんだろうと諦めさえ感じる。

「アンタ、化け物みたい」

何も言わずに目の前の女を見上げれば今度は腹に蹴りを入れられてしまった。あぁ、噎せ返る血の匂いがする。きっと内臓が傷ついているんだろう。

「なんで泣かないのよ、気味が悪い」

私だってそう思った。いや、そう思っていた。今はもうそれが当たり前になっているから何とも思わない。だってどんなに叩かれても蹴られても痛いという気持ちが沸き上がらないのだから。
軽く咳き込めば口からは血が出てくる。確実にやられたな。

「この学校にお呼びじゃないってこと、まだ分からないなんて相当な馬鹿ね」

そう、私は世間でいう『いじめられている子』、『被害者』。
でも私は誰にも助けを求めない。助けてほしいわけじゃあないし、手を差し伸べられようがその手を払う自信だってある。私のこの世界に誰も入ってほしくない。
この現実に満足しているからだ。
受け入れるべき運命なんだから、しょうがない事。しょうがないというかなんというか。多分これが私にとっての日常なんだから壊そうとする必要もない。

「これに懲りたら二度とあらわれないでよ」

ここは屋上。季節は冬。ひゅうと吹く風が肌に染みてじんわりと冷やしていくのがわかる。
毎度のことながらご丁寧に制服だけは汚して行かないのだから多分あの女達は私に対して多少恐怖しているところもあるんだろう。ほら、私が万が一告げ口をしたり破れた制服を誰かに見られたら一緒にいた女達が疑われるし。
でもそんなことはしない。大人が介入してよかった事なんて今までに一度もない。
大人は自己満足の為だけに私の事を助けようと必死になる。その様をみて笑わずにはいられないけれど、みじめな事極まりない。見ていて反吐が出そうになる。だから助けなんて求めない。

「…はぁ」

私は人と話すのがあまり好きではない。苦手ではないけれど話そうと思えない。というかそもそも私に誰も話しかけてこないのだから発言する必要がない。
…そんな私も、一時期は寂しいと思ったりはした。でも、それは何年前の事だかわからない。
また今日も、冷たい風が私を殺そうと吹いている。




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