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first kiss

第5章 Nigella


さくらは、屋上への階段を登った。

授業中だから図書室とか音楽室には入れないはず。

いるとしたら、屋上…

階段を上りきってゆっくりと扉を開いた。

顔を出して見回すとやっぱり鳳くんはいた。

よかった…
鳳くんの姿が見られて自然と笑顔になった。


寝っ転がって腕を折り曲げて枕にしている鳳くんに近づいた。



「鳳くんがサボりなんて珍しいね。」

鳳くんは声に驚いて顔をこちらに向けた。

「雪田さん…」

私だとわかると起きあがって微笑んでくれた。

「雪田さんだって、もう授業中だよ?」
さくらは少し笑った。
「いいの。鳳くんはどうしたの?」

さくらは隣に座った。

「ちょっと考えたいことがあって。」

きっと、部活のことなんだろう。

「部活のこと?」
「うん。」
「三年生が引退しちゃうの辛いよね」

鳳くんは返事をしなかった。

「私なんかにわかってたまるかって感じだよね。」

私ったら部外者なのに、わかったような口きいて。
とっとといなくなろう。

「邪魔しちゃってごめんね。授業もちゃんと出なね!」
さくらは立ち上がろうとした。

「行かないで。」
鳳くんは立ち上がろうとついた私の手首をつかんだ。

「えっ?」
私は引っ張られてもう一度地面に座った。

鳳くんは慌てて手を離した。
「ごめんっ。」


「ううん。」
私は微笑んだ。なんだか鳳くんに頼られているようで、そばにいてって言われているみたいで、嬉しかったから。


「…私もいろいろ考えたいことあるから、もうちょっとここにいてもいい?」

「うん。」
鳳くんも笑ってくれた。

二人で地面に寝て空を見ていた。
お互い、手を伸ばせばきっと届く距離。
でも手を伸ばさない関係。

しばらくの沈黙のあと。

「雪田さんは宍戸さんを好きなんだもんね。」
鳳くんは空を見たまま呟いた。

そのことで私は考え事をしていると思ってるんだろう。

違うよ、私、あの試合の時ずっと鳳くんを見てたんだよ。

宍戸先輩のことは、憧れだって気づいたんだよ。
本当に失いたくないのは鳳くんだった。

でも鳳くんにとって私は"宍戸先輩を好きな女友達"なんだろう。
だから安心して友達でいられるんだ。

自分を好きになることは絶対にない友達だから…。
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