第4章 迷夢
試合が終わって監督のコメントを受けると、鳳くんと宍戸先輩はクールダウンに走りに出た。
差し入れを渡すタイミングを逃してしまった。
でも、全体の試合が終わった後渡せればいいか。
勝つのは氷帝だって信じてる。このあとのシングルスもみんな勝ってほしい。
だけど、次の試合に勝ち進んだのは青学だった。
2-3で青学の勝ち、氷帝は敗退した。
あんなに頑張ってたのに。
あんなに強いのに。
並んで挨拶をする様子を見ていられなかった。
涙が止まらなかったから。
クッキーも、渡せないまま。
三年生はこれで終わりなんて、早すぎるよ。
鳳くんも宍戸先輩もあんなに努力してたのに。
並ぶ前に一瞬見えた鳳くんの目は涙できらきらしていた。
ねぇ、泣かないで、鳳くん。
精一杯努力してたの、私は知ってるよ。
私、ずっと鳳くんのこと見てたんだよ。
いつのまにか、目が追ってたのは鳳くんだった。
好きなんだ、鳳くんが。
そんな週末があろうと、月曜日は私の気持ちに関係なくやってきた。
さすが、氷帝のテニス部、と言えばいいのか、昨日の試合に関係なく今日も朝練は行われていた。
でも、三年生はいない。
指示は日吉くんがとっているみたいだ。
鳳くんも、ちゃんといる。
でも鳳くんは朝練が終わっても教室に現れなかった。
いてもたってもいられなくなって私は教室を飛び出した。
「さくら~、一時間始まるよ!?」
すれ違った友達が慌てて声をかけた。
「ちょっとサボる!」
「サボるってあんた!」
もうその声は耳に届いていない。
チャイムが鳴った。