第4章 迷夢
「俺は雪田さんが好きです。でも雪田さんは好きな人がいるんです。」
これが自分にとって、そして雪田さんのためにも、ベストな返事だろう。
「そうなのか?雪田はいつも長太郎のこと話してるときが一番楽しそうだけどな。」
宍戸さんはどれだけ鈍感なんですか。
それはきっと、宍戸さんと話してるからですよ。
そんなことを言いそうになるのを堪えた。
想いを伝えるかどうかは雪田さんが決めることだ。
「宍戸さんはどう思いますか?」
「雪田か?」
「はい。」
聞いてしまうのが少し怖かった。
なんと言われても雪田さんには伝えないつもりだ。
「んー、俺は好きだぜ。」
息が一瞬止まった。
それじゃ…
「優しい奴だよな。あと、ちょっと長太郎に似てるよな、人懐っこいところとか。」
そう言って宍戸さんは笑った。
…それって、人として好きってやつですか?
でも、好意を持ってることには変わりない。
『宍戸先輩と付き合うことになった』と雪田さんから言われる日も遠くないかもしれない。
覚悟しておこう。
俺が雪田さんを好きなこと、そして雪田さんが好きなのは俺じゃないってことは宍戸さんに伝えたつもりだ。
あとは、宍戸さんと雪田さんの問題だ。
その日の練習では、伝えることは伝えてしまったからか、やっと部活に集中できた気がした。
もうすぐ大会だ。集中しないと。
先輩方を引退させないためにも、応援してくれてる雪田さんのためにも、俺とダブルスを組んでくれた宍戸さんのためにも、勝ちたい。
試合に勝ったら、雪田さんに告白してしまってもいいかもしれない。
そうしたら、完全に吹っ切れるかもしれない。
まぁ、それは大会のあとで考えよう。