第4章 迷夢
「そうだよね。変なこと言ってごめん。」
俺は慌てて謝った。
雪田さんを怒らせてしまったかもしれない。
教室に戻ってきたら日吉と雪田さんが一緒にいて、しかも日吉が帰るときに何か雪田さんに言っていた。
それを見て嫉妬なんてして、俺はすこし口調が冷たくなってしまっていた。
『私は宍戸先輩が好きなんだし。』という雪田さんの言葉は思った以上にキツかった。
もしかしたらと淡い希望を持っていたから。
「私こそごめん、いつも協力してくれてるのに。」
そうだ、俺は協力するって言ったんだ。
二人の間に流れた沈黙は、チャイムによって破られた。
「…じゃあ、ね。」
そう言って雪田さんは自分の席に戻った。
協力するなんて言った過去の自分を恨んだ。
そうすれば一緒にいられるし、もしかしたら、なんて甘い考えだった。
今は部活に集中しないといけないのに。
その思いから、授業中も雪田さんからの視線を感じても見ないようにした。
放課後、部室に着替えていると宍戸さんが入ってきた。
「長太郎、調子はどうだ?」
「もうすっかり元気ですから、大丈夫ですよ。」
お礼とお詫びの言葉は、朝練のときに言ってあった。
「雪田が本当に長太郎のこと心配してたんだぜ。ちゃんとお礼言ったか?」
「はい…一応。」
昼休みのことを思い出した。
思い返しても雪田さんに失礼なことを言った。
「雪田ってさー、長太郎のこと好きだよな。」
「…どういう意味ですか?」
「どういう意味でかは俺もわからねぇけど、あんだけ心配するんだから、好きなのは確かだろ。」
宍戸さんは真面目に言っているようだ。
でも、雪田さんは宍戸さんのことが好きなんですよ。
「長太郎は?」
「えっ?」
「長太郎は雪田のことどう思ってんだ?」
なんて返事をするか迷った。
正直に雪田さんのことが好きだって言うか?
でもそうしたら宍戸さんは雪田さんを恋愛対象として見なくなるかもしれない…
では嘘をついて好きじゃないと言うか?
それはフェアじゃないような気がした。