第1章 夢見心地
さくらが彼の方に視線を向けると、
「鳳長太郎です。よろしく。」
そういって鳳くんはまた、微笑んだ。
「こちらこそ。雪田さくらです。」
自己紹介を終えた二人を見て、ゆみは、にやっと笑い、
「宍戸先輩の名前教えてくれたの、鳳くんなのよ!」と言った。
「えぇっ!」
「えっ!」
さくらも鳳くんも小さく声を上げた。
「ちょっと、ゆみーー!!」
恥ずかしくて、なんて言えばいいのかわからない。出会って数分で、好きな人を知られてしまった。しかも、相手は宍戸先輩と部活が一緒だし、前から好きなことも知られてるし…
「山田さんが言ってたのって、雪田さんだったんだ。」
と鳳くん。うぅ、恥ずかしい。
「よかったじゃない、さくら。協力してもらえるわよ!ね、鳳くん!」
「もちろんだよ。」
鳳くんの天使のような笑顔がさらにさくらの顔を赤くさせた。
「っていうかね、さくら、鳳くんのこと知らなかったの?」
「え、うん…関わりなかったし…」
テニスコートを見ていたときに何回か目にしたかもしれないけど、知ってるとは言えない程度だ。
「あたりまえだよ、クラス違ったし。」
鳳くんもそう言ってくれた。
「あのねぇ、鳳くんはあのテニス部で、去年の三年生が引退してからレギュラーなのよ!」
「そ、そうなんだ!すごいね!」
あまりテニス部自体に詳しくないが、あれだけ人がいるテニス部だから、すごいのだろう。
尊敬の念を込めて鳳くんを見つめた。
「ありがとう。そういえば、宍戸さんも、レギュラーなんだよ。」
「ひぃ」
たしかに鳳くんのお陰で宍戸先輩についてはたくさん知れそうだけど、いきなり話しにその名前をだされると心臓がついていかない。
「今度、練習見に来たら?」
鳳くんはなんて優しいのか、そんな提案までしてくれた。
「さくら、行きなよ!なんなら、私も一緒にいってもいいよ??」
「本当?じゃあ…お言葉に甘えちゃおっかな…」
今まで名前しか知らなかった宍戸先輩への恋が、もしかすると、見ているだけから卒業できるかもしれない。
思ってもみなかったことだったけど、そう思うとさくらはドキドキしつつ楽しみだった。