第3章 逆夢
自分に向かって笑ってくれる雪田さんを見てると、さっきまで宍戸さんに嫉妬なんてしてた自分が情けない。
雪田さんが宍戸さんを好きなことなんてわかってることなのに。
雪田さんの一途なところ、そこが好きなところでもある。
だから余計どうしようもない。
「なんか元気ないね?」
考え事をしている長太郎をさくらは不思議そうに見つめた。
「そうかな?」
雪田さんは俺が落ち込んだり疲れているのにすぐ気づく。
俺の気持ちにも気づいてくれればいいのに。
「大会前だし、無理して風邪引かないようにね?」
「そうだね。ありがとう。」
音楽室に着いてそれぞれの席に別れた。
椅子に座るとまた眠気が襲う。
確かに最近、大会前の焦りから朝から晩まで練習することが多い。
さっきは『前ほどじゃない』って言ったけど、本当は前以上に練習してる。
大会まであと2週間もない。負けたら先輩は引退だ。
足を引っ張りたくない。今は頑張らないと。
授業中寝てしまうことは多いけど、テニスの方が大事だから。
次の朝、起きたとき身体が熱い気がしたが、気にせず朝練に参加した。
いつもの通り、全体の朝練が始まるより早くいって、今の課題のサーブを練習した。
腕に力が入らなくて球速が出ない。
それがまた焦りを生んだ。
全体の練習も終わって教室に行った頃には立っているのがやっとだった。
席につくと教科書をだす元気もなく、授業が始まってもノートをとることもできない。
ただ目を閉じていた。