第3章 逆夢
「俺が来る前ってなんの話してたんですか?」
長太郎は食べる手を止めて俺と雪田の顔を見た。
「長太郎のことだぜ。」
「俺のこと?」
長太郎は雪田に確認する。
おい、俺の言ったこと信じられないのかよ。
「うん。」
雪田は頷く。心なしか、顔が赤い。
どうみても長太郎のこと好きだろ。
否定はしなかったし。
その後は俺と長太郎が本来するつもりだったテニスの話をして、雪田はそれを聞いていた。
長太郎もなんで雪田も一緒に食べようと言ったんだ?
雪田はつまらなくないのか?
そう思ってときどき雪田の表情を確認するが、いつも雪田は楽しそうに笑っていた。
それを見るたび安心した。
「とりあえず、長太郎はサーブのコントロールだな。」
「そうですね。」
話がひとまとまりしたところで、長太郎は立ち上がった。
「では、もうすぐチャイム鳴りそうなので、教室に帰ります。」
雪田も立ち上がる。
「楽しかったです。失礼します。」
そう言って、雪田はペコリとお辞儀した。
礼儀正しいんだな。
「また来いよ!」
「はいっ」
雪田も長太郎もニコッと笑った。
なんか、似てるな、あの二人。
なんでも嬉しそうにするところとか。
二人が出ていってすぐにチャイムは鳴った。
あいつらちゃんと授業に間に合ったのか?
今ごろ慌てて走ってる気がする。
笑みがこぼれそうになるのを無理やり押さえた。
「あれ…」
机の上にまだ水筒が置いてあるのに気づいた。
たしか、雪田のだ。
後で届けるか。
心のなかですこし喜んでる自分がいた気がした。
また会う理由ができたことが嬉しいのかもしれない。