第2章 願望夢
夕陽が当たる道を雪田さんと二人で帰る。
待ち望んでたことのはずなのに、苦しかった。
雪田さんは幸せそうに笑っているけれど、それは宍戸さんのおかげなんだ。
『鳳くんは、好きな人いないの?』
「雪田さんだよ。」
って言えればどんなに楽か。
でもそれじゃあすべてが台無しになってしまう。
雪田さんの笑顔が見たいから、自分の気持ちは押し殺して、宍戸さんと雪田さんをくっつけるようなことをしている。
「鳳くんって本当にいい人だよね。」
雪田さんは幸せそうな笑顔を俺に向けた。
「…そうかな?」
「今まで会った人のなかで一番優しいよ。」
"いい人"か。
優しくするのは雪田さんだからなのに。
「じゃあ、また明日!」
長太郎とさくらの分かれ道についた
。
「うん、また明日。」
長太郎がそう言ってもさくらは立ち止まって帰らず沈黙が流れた。
何かを言うか迷っているようだった。
「雪田さん?」
長太郎が耐えきれなくなって聞くとさくらは恥ずかしそうに口を開いた。
「鳳くん、テニスしてるの、かっこよかったよ。」
「え?」
聞き間違いかと思った。
「今日はありがと!」
そう言ってさくらは背を向けて行ってしまった。
さくらが見えなくなったあとも長太郎は立ちつくしていた。
どうして、雪田さんは、諦めようと思うとそう言うことを言うのだろう。
希望を捨てきれない。
いつか俺だけを見てくれるんじゃないかって。
こうして優しくしていれば、気づいてくれるんじゃないかって。