第1章 3月9日
「相楽さんの付き添いの方ですね」
そう声をかけられて輝は顔を上げ、立ち上がる。診察にあたった医師は凜が無事であることを告げ、救急措置の素早さを一しきり褒めた。
「ご家族との連絡は付きましたか?」
訊ねる輝に医師は「相楽という姓が珍しいのでよく覚えています。一週間前の記事です。読んでみて。」
口調に微妙な違和感を覚えて医師を見上げる。差し出された切り抜きを受け取り、目を通す。
「くそっ……」
自分でもコントロールできない怒りがフツフツと湧いてきた。
「あなたもしかして医学部の生徒さん?」
医師は輝を見上げ、首を傾げる。ついでにもう一つ、と呟いた医師は一言輝の耳に囁いて立ち去った。
その声に心の中で返事をする。
《やってやろうじゃないか》