• テキストサイズ

闇の底から

第9章 邂逅


同時刻藤宮家ではちょっとした竜巻が起ころうとしていた。
「おいどういうことだよ!凜姉との縁談破談って!」
荒れる 次男、藤宮響、霧島学院高校1年生。
「何でも、代わりが本家の長女の奏さんなんだとよ…アイツから本家のドロドロ話結構聴いてきただけに二つ返事じゃ無理無理…舐められたもんだな。」
やさぐれてじゃがりこたらこバター味に伸ばす手が止まらない長男、藤宮宗馬、S大学医学部医学科1回生。
「さっさと告白しぃひんからそんなことになるんやて!これやからヘタレ言われるんやわ!」
凜を可愛い妹分として溺愛してきた長女、藤宮朝陽、K大学法学部3回生。
「…しっかもこっちが断れんように替え玉まで据えてくるってのが黒いもん感じるねぇ」
面目丸つぶれの姑、藤宮桜。
「この御時世で許嫁ってのが時代錯誤ですよ、宗馬も自分で決める権利あるのよ?」
箱入り娘で世間知らずの嫁、藤宮麻衣子。
「……凜ちゃんもだけど、この娘も器量良しだねぇ…まだまだ世の中捨てたもんじゃないねぇ…」
何処吹く風の当主、藤宮憲史。
そんな折に鳴ったチャイムは響の口を引っ張っていた宗馬も、床に伸びている朝陽も、夕飯の支度をしていた麻衣子をも硬直させた。
立ち上がろうとしない桜を見て憲史はやれやれと立ち上がり、インターホンに応答した。
「どうも、S大学医学部サッカー部の東條と申します。夜分遅くの訪問お許し下さい。」
玄関に走っていった宗馬はドアを開けたのではなく、チェーンとロックを掛けに行った。
「え、東條ってもしかしてだけどイケメン従兄弟の片割れ?凜姉についてたカテキョの…」
響のそれだけの発言で桜はすっくと立ち上がり、宗馬の抵抗を全て解除した。
「今必要なのは何だい?」
妖艶にそう微笑んで家族を振り返る桜に戦慄しない者はいなかった。

「初めまして、東條さん。騒がしい家ですがどうぞ。」
まだ緞帳は上がったばかり。
主役のいないその場限りの芝居が始まる。
解けるもの
溶けるもの
思惑が絡まり合うほど事態は膠着する。
そこにメスを入れられるかで変わる運命がある現実を受け止めて進むしかない。
/ 56ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp