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闇の底から

第1章 3月9日


うわああっっひとがたおれたぞーーー!
という切迫した叫び声が後方から聞こえてくる。見てみればびっくりしたように立ち竦む人、110番する人はいても倒れた人に寄り添う人はいない。
人垣を割りながら中心に進むと青白い顔をして瞳を閉じた女の子が倒れている。その顔を見て輝の心拍数は跳ね上がった。凜だ。まさかと思ったが間違いない。
脈はあるが呼吸がないのでそばにいた数人と協力して救急車が来るまで心臓マッサージと人工呼吸を行う。
躊躇っているわけにもいかず、未だ息をしていない桜色の柔らかい唇を塞ぐ。その中に自分の息を注ぐ。これで寿命が縮もうが構わない。いち、に、さん、し、と掛け声は続く。救急車が来たぞ!という怒号の後、人垣が割れる気配がした。
「東條先輩っ」「あきら!」と聞こえた時には凜は息を吹き返しており、輝は救急隊員に頼み込んで同行させてもらうことにした。先程声をかけてきた二人に凜の受験票を渡し、合否を知らせてもらうことにした。
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