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闇の底から

第8章 光と闇


「自分を大事にできない奴は他人を大事になんてできない、だなんて綺麗事。不幸になったことのない人だから言えることよ。羨ましいわ。」
輝は言おうとしたことを凜に取られて臍を噛んだ。挙句幸せな人カテゴリーに入れられてしまう始末である。結局はブレーキを踏むどころかアクセルを踏んだようなものだ。自分で踏んだアクセルをなかったことにはできない。
「二度も救われたこの命、公の為になるなら本望よ。というより危ない目に遭うその度に執行猶予をもらってるようなものじゃないの。相楽凜としての運命がそれなら従う以外の選択肢は私の中にない。さあ、厄介な私を拾って支えてくれた伯父様の所へ行かせて頂戴。」

そしてボストンバッグを肩にかけ、二人を残して走り去った。

相楽の現得宗が亡くなれば自動的に凜がその後を継ぎ、相楽の存続のために一生をかけていくことになる。
その運命が奪ったものは計り知れない。
「なあ…ほんとに何なんだよっ!!」
押し殺した声で壁に拳を撃ち込む渉
「凜を返してくれよ…」
凜でありながら凜ではない存在に戸惑う輝
そんな二人を物陰から見つめる影の存在
「あの娘のどこがいいんだか?」
双子で好みが似るって本当だったのね。
続けてそう呟きながらコルクボードに無数に貼られた写真のうちの一枚に向き合う。写真に映る美しい少女の顔をなぞりながら語りかける。
「…絶対あんたの仇を取ってやるからね…奏」

光と闇の狭間で起こった変化に気づいていない者たちが動き出す。
陽は隠れ、昼でありながら夜である時が訪れる。
大きな変化にも動じることなく、メリーゴーランドは今日も動き続ける。
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