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闇の底から

第7章 トラップ?トリップ?


旅館に戻ってきた凜は脱走と騒がせたことを詫び、責任を取って軽音部を辞めると宣言した。

凜を捕獲して輝が軽音楽部の旅館を訪ねた時は既に10時をまわっていた。
軽音楽部の数人が時間交代で捜しに行ったが見つからず、サッカー部にも捜索要請を出したのが8時。
あんなに簡単な所にいて、しかも歌っていたらすぐ見つかっただろうによくも半日逃げ切ったものだと内心舌を巻いた。
逃げ出した理由だけは口を割らず、ただ謝るだけだった。
「東條先輩、お話があります。」
そう言って渉と連れ立って消えていった。
「凜どこにいたの?」「よく見つかったな」
そう安堵の声が漏れる一方で異様な空気を醸し出している女子に近づいた。
「あんた、玲と仲良い二回生の真島さんだよね?」
凜が戻ってこないほうがよかった?
そう聞きたい衝動を押さえ込んで話しかける。
「玲向こうにいるから顔見に行ってあげてよ。向こう女子少ないんだ。」
そう促してサッカー部へと誘導する。
何があったかは知らないけど放置しては危険だ。
よくも悪くも医学科の女子は気が強く思い込みが激しい一面がある。それも6年間桐桜という女子校にいたのなら尚更だ。自分に何ができるかは全くもって未知数だがやるしかない。


「おいそれ本気か?」
私はただ頷く。
思い込みが激しい人に何を言っても通じない。だってあの人、渉先輩が好きで好きで仕方ないんですよ。関係ない私を敵対視するくらい。このままだとFROZEN FRUITを私が壊してしまう。
「これ以上厄介になるわけにはいかない『辞めさせねぇよ、こっちはその歌声見込んでスカウトしてんだし今回だって悪いのはオレらだ。おまえが辞める必要ねぇんだよ。頼むからさ…』」
ふわりと抱き締められる。温かい。
でも、だめだ。
それに、潮時だ。
「渉先輩は私を通して誰を見てるんですか。他人の空似なら迷惑千万です。私はその人じゃないんです。」
渉はざっくりと刺された顔をした。
「オレを通して輝を見てるんじゃないか、凜もさ」
なんでお互いを通して別のものを見てるんだ。
3Dで触れられる距離にいるのに、遠い。
でもこれだけは伝えたい。
「歌声に惚れさせたのも、その翻弄するような色香でオレを惑わせたのも相楽凜で他の誰でもない。お前が退部するなら軽音部を廃部にする!!」
罠にかかったら抜け出せばいいだけだ。
動かなければ始まらない。
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