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闇の底から

第7章 トラップ?トリップ?


藤宮の家に嫁入りすることになるの?私は。
得宗って婿取るんじゃなかったっけ?
疑問は口から溢れでていたようで、一つ一つ宗馬が答えてくれた。

「じゃあまたよろしく、でいいのかな?」
宗馬を見上げると顔が降ってきた。おでこがぶつかったところで宗馬は止まった。
「じゃあな未来の嫁さん。みんな捜してるぞ」
そう言って宗馬は降りていった。

でも私は何となく戻る気になれなかった。
いつまでもコドモだから東條先生にも相手にされないんだろうな…という自嘲が空に吸い込まれる。
もう少し早く生まれたかった。


静かに怒るその瞳に惹かれる自分がいる。
悲しみと葛藤を抱えてそれを全部一人で背負いこんで。
差し出される幾多もの手には見向きもしないで。
ただ進む。
怒りがこみ上げる。
罠にかかったと思った。
どこで覚えたのか色香を纏った彼女には
通用しなかったらしい。
それ程までに一途なのか。
自分を押し殺して生きている。
闇の底に包まれし謎はパンドラの箱の中。
誰も触れられない。


罠は何もあれ一つじゃない。
下級生だけの力で今の医療は変わるはずがない。
なぜひた隠しにする?誰と協定を結んでるの?何人いるの?私だってー
全ての罠に気づくことがあるとすれば。
仮に気づいたとしてももうその時には手遅れ。
あなた一人が消えるだけじゃ済まない。
さっさと上級生に渡しなさいよ…一切合切を。



歌声に引き寄せられて石段を上がる。
言わずと知れた歌。知らず知らずのうちに自分も歌い出す。しばらくすると気づいたみたいで歌の主は振り返る。瞳がこぼれ落ちそうなほどに見開かれる。
ワンピースの裾が風に揺られる。
な ん で
と口が動く。それはこっちの台詞だ。
こんな夜遅くにそんな格好で出歩くなんて。
「走り込みですか?お疲れ様です。」
そう言ってすれ違おうとする腕を咄嗟に掴んだ。
離してください。射るような視線が下から浴びせられる。ー嫌だ離さないー勝手に口が動く。
いい加減私の中から出て行ってよ
振り払われたが背後から抱きしめる。
暗いんだから送らせろ。
腕の中の教え子が頷くのを確認してその手を繋いだ。

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