• テキストサイズ

闇の底から

第7章 トラップ?トリップ?


「そう来ると思った」
渉はニヤリと笑い、バスケットからバゲットを取り上げた。せめてもの仕返しに…
「ああ、最後の明太のりだったのに…」
相当お気に召したのか物凄く悔しがっている。が、首をふるふると横に振って別のバゲットを取り上げる。
レーズンらしい。また良かったのか黙々と食べ出す。
「渉、そんなに見てたら凜に穴が空くからやめろ」
弥生に邪魔される。凜に手ぇ出したらどうなるかわかってんだろな?と迫ってくる。
ふと凜を見ると赤い。酒も飲んでないのに何でだ?と怪訝な顔をしていると瑞季から解説が入る。
「弥生先輩イケメンすぎます…凜が卒倒しちゃいますよ!」
あー、やっちまった。と苦笑する弥生が桐桜出身でイケパラで佐野役をやった、というところで凜の記憶が繋がったらしい。
「あ…あの時は握手ありがとうございました」
いや?こっちもそんなん言われたことなかったし嬉しかった、と弥生が言うものだから凜が悶えている。
弥生、お前は俺をからかってるだけだろ。
どんだけ色仕掛けの罠を張ってもかからない。それに本当に輝のことが好きだった、そしてまだ諦められていないのも凄く分かる。玲のことを考えて身を引こうとするいたいけな姿を見ているだけに自分の幸せを考えろと言いたくなる。
「お前も報われねぇな」
幾度もいろんな奴から言われた。不毛な戦いはやめとけ、と。でも凜が自分を見て輝を思い出してるだなんてそこまで分かってしまうだけに動けない。

「渉、凜が寝落ち」
椅子なのに器用に眠っている。迷惑をかけないように、という彼女なりの配慮なのか横ではなく前に揺れている。それはそれでかなり危ないのだが。
「やっぱりこの憎めないキャラすっごく憎いです。」
カフェラテをすすりながら瑞季が呟く。
やっぱり敵わないなー、悔しい。という発言でその場の温度が下がった。
「やだなもう、そんな目で見ないでくださいよ。実は一つ提案があるんですけど…」

眠り姫は自らにかけられた仕掛け罠をまだ知らない。
/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp