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闇の底から

第5章 show timeー準備


「だからさ、何でそんなに過激派なのアンタは」
香奈の呆れた声が上がる。
玲さんの動向について聞かれた私は、三神玲を知らない人たちに説明するついでに彩葉によって東條先生をめぐった問題まで懇切丁寧にまるで俯瞰で見ていたかのように洗いざらい暴露されて今に至る。
渉先輩のしつこい軽音楽部勧誘の話に及ぶと奈良の笠井さんが口を開いた。
「部活動って結構色々な情報入ってくるの。だからそんなに捨てたものじゃないと思うよ。東條さん経由で5回生の動向も分かることもあるんじゃないかな?」
S大学における不穏な空気は確かに上の学年の方が感知しやすい、という結論に辿り着き、私の任務は軽音楽部入部ならしい。

「この計画は15年計画だ。尤も、賛同者が多いに越したことはないから地盤を固め、人脈を広げ果ては男性医師から女性医師への差別の根絶及び、育休産休といった制度は勿論、女性が医師であり続けられるための制度と環境を作ることだ。全国の医学部の定員を増やし、地方との連携も取れたら言うことはない…しかしそんなに簡単に行くはずもないから前線から引いた後も後の世代にこの問題を継いでもらわないとならないだろう。一人だけでは動けない。みんなの力が必要だ。」
今の私たちは非力だ。出来ることがあまりにも少なすぎる。将来都道府県を越えて連携していくためにもお互いのことやその地域のことを知っていた方がいいと思うんだ。
動き出しでバレて攻撃を受けたらひとたまりもない。だから少なくとも国家試験を突破する迄は秘匿しなければならない。だから上級生にばれてはいけない。いつかは味方に引き入れるが今はまだ機が熟していない。
青い双葉を摘まれては元も子もない。

「あたし、誘ってもらえて良かった。」
口々と皆意見を述べていく。面接を突破したメンバーだけあって軸がしっかりしている。心が強い。目の光が輝かしい。暗いところでもその輝きが見えそうだ。

人生で初めて同志を持った一回生の6人は暫くして別れた。次は3ヶ月後大阪で。

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