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闇の底から

第5章 show timeー準備


あ…危なかったー。
米原行きに這々の体で乗り込み、座席に沈み込む。京都に寄ると伝えたら得宗のお披露目会のための振袖を見に行くから帰って来なさいと、養母である伯母に呼び出されたため、泊まりがけである。

ドアの前で話す二人組のシルエットに見覚えがあり、そっと気づかれない程度に凝視する。
幸せそうに笑う顔を見て、どこか違和感を感じる。
その正体が何なのかわからないうちに2人は大阪で降りた。

視線を感じ、気配を探す。
相楽凜だった。カワイイ顔が台無しねー、と余裕を持てるようになったのは、輝からのプロポーズがあったからだ。この人の側にずっといたい。私の隣で笑ってて欲しい。願わくば、私といることがあなたの幸せに。
小さい頃の思い出には必ず輝が出てきて、アルバムはツーショットだらけだ。

「玲どうかした?ついたよ」
振り返って手を差し出してくれる輝にふわりと微笑み、何でもないよ、幸せなだけ。と言ってその手を取った。
大丈夫、輝は私を見ている。
もう、離さない。

「あーっ彩葉さんに香奈!!」
醸し出すオーラのせいで周囲から物凄く浮いている二人に近づく。
「やっと来たか。奈良、和歌山、滋賀はまだ来ていない。恐ろしく暇だ。」
都道府県の名前で人のことを表す彩葉に苦笑いしつつ、八ッ橋を試食する。
「あれ?あんたの家って八ッ橋贈られてくるんじゃなかったっけ?」
八ッ橋を物珍しげに試食した挙句、三箱購入した凜に香奈が不審な目を向ける。
「八ッ橋じゃなくて羽二重餅!!間違えたらあかん」
ヒートアップしかけたところに滋賀県の人が現れる。
五分と経たず全員揃い、彩葉の住むマンションへと向かった。

もうありきたり過ぎて驚く気力も残らない。
このお嬢様は最上階を占拠していた。最上階直通のエレベーターに乗り込み、たどり着いた先はクラス会くらいが出来そうなリビングだった。
メイドさんまでいる。二言三言交わした後メイドさんは帰って行った。

「さあみんな!始めよう!」

物凄く嫌な予感がしたが気のせいだ。
うん、絶対そうだ。
…そう思いたい。
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