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闇の底から

第1章 3月9日


PiTaPaを使って改札を出ようとして引っかかる。乗車記録がありません、と改札機に怒られ、後続の人たちに内心詫びながらPiTaPaで入場しなかったのを思い出す。

ふっ…吐く息が白い。マスクをしていても息は漏れ出る。面白くなって定期的にわざと上を向いて、自分の中にわだかまる窒素と二酸化炭素と酸素を勢いよく放出する。オープンキャンパスでは途中から暇を持て余して会場で寝てしまい、学祭ではあまりの規模の小ささに愕然とした。それでもこの学校を目指したのにはきっちりとした理由がある。

15年前、私に弟が出来た。昔のことすぎて記憶にないが、なかなかに世話を焼いていたそうだ。しかしその弟との生活は1年にも満たなかった。
ベビーベッドのアラーム音で両親が飛び起き、近所の人に私を預けて救急車に乗って行った。晴れた日なのに私は「これきよーか」とレインコートを着てはしゃいでいたそうだ。何も知らない、何も出来ない無知な存在…私はそんなものでしかなかった。
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