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闇の底から

第4章 逆ハーレムの実態


「きっとそれは絶対数が少ないから皆女子に対する視力が低下しているだけですって」
そう言って笑う凜は笑っているつもりだろうが笑えていない。よっぽどショックだったのかまだ震えている。

「大丈夫だ。オレと輝と玲がいる間は大丈夫だ。こんな時くらい大人しく守られとけ。」
とは言えこの三人は5回生で病院での実習が主だから実はあまり接点がなくなる。

「あんな志の低い連中のせいで、渉先輩と東條先生がかっこよく見えるんですけど、これもmagicですね。」
勇気を振り絞ったこの言葉に二人とも気づいたようで、一瞬目を見開いたあと笑ってくれた。

「そうだ、凜」
東條先生が振り返る。そうやって、私の名前を呼ぶその声がどうしようもなく好きで好きで仕方ない。
「その唇キープしとけよ。なかなかにいい感触だった。」
…………………………………??????
「人工呼吸」
そこまで言われてやっと気づいた。
「初めてだった?」と悪戯っぽく光る瞳に自分の中身が溢れ出た。
ただ静かに流れ落ちる。そして止まらない。
なのにどうしようもなく心地よくてそのまま流れるに任せる。この気持ちの一切合財が無くなれば…

「先生、あの時助けてくれて本当にありがとう!先生は命の恩人。理科と数学をわかりやすく教えてくれてありがとう!悪戯の応酬も楽しかったっ…ホントはもっとたくさん教えてもらいたかった。センター2日前に元気くれてありがとう!試験会場で頑張れた!それにその笑顔に今まで自分でも知らないうちにたくさん支えられてきたの。だから、ありがとう!追いかけたいと思わせてくれてありがとう。家のことで記憶を失くした私を気にかけてくれてありがとう。あ、待って次で終わりにするから」
口を開きかけた先生を阻止する。
深く息を吸った。これで最後。次はない。
「本気で好きにならせてくれてありがとう。ファーストキスが先生でよかった!でも唇はキープしない。もう誰のものでもないから。」
そして背を向ける。今の顔は見せられる状態じゃない。
何で届かない相手をすきになっちゃったんだろう。ニヤニヤしないで渉先輩。同じ形の違う目で私をかき乱さないで…お願い。
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