• テキストサイズ

闇の底から

第4章 逆ハーレムの実態


てめっ、ふざけてんのか!
沸点上昇、凝固点降下、蒸気圧降下。
この三者三様の反応は、左から順に渉、凜、輝である。
「好きな女一人落とせない人には言われたくないですねー」
宗馬の囁きに輝が息を飲む。バレてるなら話は早い。
渉を窺うが表情が読めない。凍りついている。一番怒っているときの渉の顔だ、と思い当たることのある輝まで顔が凍りついた。

「なあ、凜。お前が好きな人に振り向いてもらえるまででいい。それまで、毎日くだらないやつのせいでイヤな思いをしなくていいように守らせて欲しいんだ。無理にとは言わない。」

凜の表情もまた消えていた。そして口を開く。
「あのさ、宗馬。私には宗馬は勿体なさすぎるよ。優しくって明るくて面倒見が良くて。かと思えば少し抜けてて、電車とかもしょっちゅう寝過ごして。そんな宗馬に惹かれる可愛くて気立てが良い素敵な子が見つかるよ。それにあんた許嫁いるでしょ?私と一緒にいるだけで誤解されてるってこの間響が教えてくれた。私には、守る価値も守られる価値もないの。だから」
ありがとう。ごめん。私はもう関わらない。
私は関わる人を周りと衝突させてしまうみたい。
「意外と薔薇似合うね。許嫁さんにしてあげな、そういうことは。」

「ちょい待てよ凜!」
渉にあっさりと追いつかれた凜はそのまま背中を渉の胸に抱きとめられた形でホールドされた。
耳元で囁かれる。
「じゃあさ、俺にしない?輝に瓜二つだし凜のこともっと知りたい。寂しい思いも悲しい思いもさせない、絶対に。大事にするよ。」

さっきから身体が熱い。触れられるとビクッと肩が跳ねる。耳元の声でさらに火照りが酷くなる。
なんなのこれ、身体がいうことを聞かない。いきぐるしい。
抱きとめていた腕が解放され、へたり込む私をくるりと回し、渉先輩は目を目開いた。
なんでそんな誘う眼してんの?と怪訝な顔で聞いてすぐ思い当たることがあったのか、水を飲ませてくれる。

一本飲み干してやっと普通に息ができるようになった。
「薔薇だろ、薔薇」
答えをくれたのは東條先生だった。
俺までおかしくなった。と自嘲的に嗤う。今玲がいたら確実に襲ってた、という言葉で薔薇が催淫効果を持つということに辿り着いてなんとも居心地が悪くなる。
俺もよく堪えたわ、と渉先輩。
「さしずめ一回生は全員凜狙いのオオカミってこと。」三者三様のため息が空に消えた。

/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp