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闇の底から

第4章 逆ハーレムの実態


「あ、もう一つ言い忘れた」
と凜が言葉の奔流にまた液体を注いだ。色々な輝きと透明感をもつ飴のような、そんな液体が注がれる。輝は一雫も残さず飲み干す。
「玲さんとこの先もふたりお幸せに。」
咽せて少しこぼしてしまった。

「何で追いかけないの?」
その場に居ないはずの玲が姿を見せた。今日はコンタクトではなく眼鏡らしい。モスグリーンのフレームが夕陽に反射して光る。
「あの子の必死を無駄にする気?」
無駄も何も
「あの子の気持ちには応えられないからさ。」
玲、「ここ予約していい?」左手薬指をなぞる。あの子が苦しくなるように一回生を操り仕向けたのはお前だろう?お前から目を離せば凜をさらに危険に晒す。だが言葉にすれば全ての均衡が崩れる。だから俺は感情に蓋をする。
「渉はどうすんの?」玲の追及は続く。
渉はニヤッと笑って「気長に行くよ。あの子頑固だから放っておいたら一生一人だろうし。」
それに、と口を開く。
「あいつは知れば知るほど味が出る。誰とどんな恋をするか興味津々だからさ。」
玲、あんたそろそろ引き時だよ。
最初から輝が無理してることも分かんないあたりだめだねえ。
口には出さなかったが通じたらしく、玲の視線が鋭くなる。瞳は大きいままに鋭い視線を送れるあたり、縫い針みたいな子だと思う。男前キャラが削げた素の表情が垣間見える。
渉は玲の中に一瞬だが凜が見えて、輝が何でこの子を選んだのかがわかるような気がした。
「そういやさ、二人の馴れ初め聞かせてよ、アツアツなんでしょ?輝?」
3回生のときに農学部から学士編入してきた渉には知らないことが多い。
今後凜を知るにあたっても重要なことであるのは間違いない。

「じゃ、場所変えるか」
やっと玲がキャラを取り戻し、輝の腕に絡みつく。それを渉が冷やかす。

玲の頭を撫でて愛おしそうに目を細める輝をただひたすらに見つめる不穏な視線に三人は気付くことなく去っていった。

「楽しくなってきたねー」
手帳を仕舞い、並木道を歩く。蝉が呟きを掻き消す。
そろそろだね、西日本メンバーに会いに行こう。
少女の脚はS大学正門で止まった。
7センチヒールが石段を律動的に叩く。
そしてある人の背後に忍び寄る。
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