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闇の底から

第4章 逆ハーレムの実態


1セメスターの試験がやっと終わって夏休み。
入学後すぐの玲さんの医学科男子への忠告も空しく、また私の爆弾発言によって、こういうことが絶えなくなってきた。
「相楽さん、フリーなら付き合ってよ」
あんたらはアホや、と内心ため息をつく。
金魚のフンみたいにワンパターンなお誘い。
しかも、好きです、とは誰も言ってこない。物珍しさと、こんな子と付き合っているんだぜ、という付属品ないしは自分のステータスのために私と付き合おうとするバカどもの集団で!こんな奴らを通した大学に対して腹をたてている。それに私は誰とも付き合わない。
私の心にはたった一人が今も昔も居座っている。追い出しても気が付けば戻ってきている、そんな不思議な人だ。
「一回しか言わん。おまんら全員聞いちょれ!おまんらのくだらん賭けの対象になるなんざ虫酸が走るき、金輪際この手の話題を振るな。大体今まで声かけてきた不届き者でほんまにうちを好いとる者おるか?おらんやろ。うちも同じや。おまんらみたいなのは願い下げやき、必要ないときは近寄るな!!!」

「凜」
振り返った私の顔は蒼ざめた。
「「今度は一体何なの?」」
土佐藩士の気分です、ハイ。
「ダブル東條の登場……」
結果的にしょうもない親父ギャグに収束した私の苦し紛れの抵抗はゲンコツという痛いものとして還元された。
「いった!それが他人に対してしていいことなんですか?」
「お前は女子じゃねえ、こんなにかわいくねえ奴はマジで性転換しろ!」
女子扱いされてないのは嬉しいが、最後の一言がいただけない。
「渉先輩?」
この間香奈と栗色僕っ娘の彩葉に仕込まれた上目遣い、という技を使ってみる。
なっ、と息を呑んだのは二人同時でかなり面白い。
なるほどこれは使える。
「せやけどうちは女医として生きる道を選ぶので性転換はしませんよ。これからは女の時代ですから」
ドヤ顔をすると肩に手がかかった。
「じゃあ、そんな凛々しい君の瞳に花を贈ろう。」
そこにはしばらく見なかった顔があった。
「宗馬?あんた今まで一体どこに…「好きだ!!」」

はあああ???
ダブル東條と凜の叫び声は山びこになって跳ね返ってきた。
宗馬の持っていた薔薇の花束からは誘うような怪しげでどこか艶かしい香りがした。
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