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闇の底から

第3章 一回生の紅一点?!


「なんや輝と間違われたってわけー?」
東條渉の不機嫌ボルテージは跳ね上がった。
ー東條先生こんにちは!ー
そう言って向けられたあの微笑はあいつのものだったのか。よくわからない感情が自分の中に渦巻くのを感じる。心にもないことを並べてみると案の定つつくと泣いた、が一枚上を行かれた。
整った顔立ち、潤む目。シチュエーションと関係が違えば間違いなく押し倒し…おっと失礼。
加虐心をそそる顔つきもできるのか、と相楽凜の情報に加える。そんな顔でも吐く言葉に破壊されたのは親父も同じようだった。気骨がある、どころじゃない。
こいつは止めないとどこまでも暴走して自分を壊す。
なぜ自分を大事にしない?
お前はたぶん十二分に可愛いよ、黙ってれば。


思わず怒鳴ってしまった。
ー東條先生って将来娘に鬱陶しがられる父親の典型ですよねー。娘さんは絶対玲さんに似て凛々しい女の子だろうし。ー
クククと腹を二つに折って目に涙を浮かべて笑い転げる凜が無理をしていることしかわからない。叔父である学部長の目論見は謎だが、彼女より成績が上の人間がボコボコ面接で落とされているのを知って以来、妙な胸騒ぎがする。今年から面接の配点が2倍になっているのにも引っかかりを覚える。
物理や数学でヘルプを求めてきたときのあどけなさが垣間見えて安心していると、知らない顔を見せられて動揺する。
玲はわかりやすい。割とすぐに顔に出る。
凜はーつかめないー。なあ、何に突き動かされて動いてるんだ?渉に気に入られるってよっぽどだ。
そんな目で俺のことを見るな。
蓋をしたはずの感情が溢れてくる。
だめだ。忘れろ。俺はあいつを制御できない。

あーあ、凜がパワーアップしちゃった。
元から可愛いのに、自分を不細工だと豪語する。女子大だったら間違いなく吊るし上げられているだろう。モテる癖に女子をかたっぱしから蹴散らす渉を逆にやっつける強さまで持っている。
そして微妙に距離を置かれている気がする。
ねえ何があったの?やっぱり放って置けない。
輝の気持ちが凜に傾いているのがよくわかる。
凜が輝を好きなのは前ならダダ漏れだったが、今では凜の感情自体が無味無臭で掴めない。
これは一度話し合わないといけない。
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