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闇の底から

第3章 一回生の紅一点?!


ー7月ー
人の噂はマッハだ。そして絶対75日で収束しない。今日で80日だ。
講義では毎回毎回好奇の目を向けられる。
ー医学科女子は絶滅危惧種ー
さすがの私も限界だった。
周囲からは、おいあれが相楽凜だってさ。とまあ飽きもせず色々な人に名前と顔を知られるという丸裸にするような舐める視線が気持ち悪い。
可愛いだとか可愛くないだとか、値踏みされるような気持ち悪い視線に晒されて凜は限界に達した。
講義終了後、喋っていたメンバーの前に立ちはだかる。
「俺らに何か用?」
にやにや笑うデブ眼鏡やガリガリ吊り目達に。
部屋全体に響くような声を出せるようにすうっと息を吸う。
「絶滅危惧種も何も私は元から一人。影でコソコソ言ってないで直接かかって来い!意気地なしめ!女子よりタチ悪いわ。そんなに私の話したいなら、どっか他所でやって!こっちは勉強しにきてるんや、邪魔すんなアホども!これ以上私の大学生活に支障をきたすようなら…あんたらを社会から消してやろう。医学科男子でも、だ。しつこい!私に今後一切薄汚い姿を見せるな穢らわしい!」

それだけ言い残して外へ出た。

「相楽っちー!!」
桐桜時代の渾名でお呼びがかかった。
AOで受けて落ちて一般でも受からず、後期で旧帝大医学科に受かった香奈だった。
「香奈てぃ久しぶり元気ー?」
「多分相楽っちよりは」
思い出話や近況報告、果ては昨今の医療問題に話は派生する。いや、香奈よ、あんたはここまで電車で2時間かけて来て何をしに来たんだ、と問いかけると香奈はにんまりといやな笑い方をした。
この笑いが出てロクなことがあったことがない。高校3年間彼女とクラスメイトだった私の本能が全霊をかけて告げる身の危険の警報が乱入者によって阻まれた。
「協定を組まないか、僕たちと。」
透明感溢れる、鼓膜を震わせる声に振り返ると栗色のロングヘアの持ち主が瞬き一つせず私を凝視していた。
「いっておくが染めていない。」
唐突に告げられた地毛宣言に毒気を抜かれる。いや、突っ込むところはそこじゃない。

「相楽家次期得宗 相楽凜にしかできないことがある。」
そう言って見せられた書面を見て私の腹は決まった。

裏の裏をかこうじゃないか。
僕たちはひ弱な、か弱い、ただ守られるだけの存在じゃないことを示してやろうじゃないか。

その言葉に応えるように私は差し出された手を握った。
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