第1章 時を経て。
「エレンっ!大丈夫!?顔色が悪いよ!」
『大丈夫だよ。思い出しただけさ…』
まだ…あの人の手の感触がここにあるようだった。
さっきのあの人とは違う。
優しい目で俺を見て、逞しい腕で包み
ずっと、守ってくれていたあの人。
…最後は…泣いてくれた。
『…へいちょ…俺、明日死ぬんですね。』
「…………あぁ。」
『この手で殺される。。…これ以上嬉しいことないですよ。』
「…バカか。笑うな。」
『兵長…また会えますよね。』
「…………あぁ。」
『良かった。』
最後に見た、壁の上から見る外の世界。
満月の夜だった。
明るく二人を照らし…兵長が凄く綺麗だったのを覚えている。
「なぁ…エレン。」
『何ですか?』
「次に平和な時代に生まれたら…
一緒になってやるよ。」
兵長が俺の手を握って、俺も答えるように握り返した。
『…っう…うれし…い…ですっ…』
ボロボロと止めることが出来なかった涙。
あの時…素直に死ぬのが嫌だと言っていれば…
あの人は…俺と逃げる道を選んでくれたかも知れない。