第4章 犠牲
結局、彼女はその続きをいうことはなかった。
ただじっと桜を見つめていた。
それからだった。
僕がやたら彼女を気にするようになったのは。
罪滅ぼし、とでも言うのだろうか。
今日もあの廊下にいるかもしれない、そう思い、無駄に自室と廊下を往復した。
自分でも分からなかった。
最初は、慶次くんへの恨みの反動でこんなことをしているのだと思った。
慶次くんが憎いからこそ、彼女が気になってしまうのだと。
しかし。
桜が葉桜へ、そして完全な青々しい緑となった時にため息をついた僕がいて、ようやく気づいたのだ。
僕が気にしてるのは、彼女自身なのだと。
彼女を純粋に気にしていると。