第4章 犠牲
僕と秀吉だけになった部屋。
空気は張り詰めていた。
まだ、僕の演技は終わってはならない。
「は…やっと出ていった。あの侍女を持て余していたからね。」
「いいのか、半兵衛。」
いいもなにも、すべての発端は秀吉、君じゃないか。
そう言いたくなったが、ぐっと堪える。
「世話役にはもってこいだと思ってたけど…」
「そうか…」
僕が彼女を突き放したこと。
秀吉は自分がねねを殺めたことに重ねているようだった。
似たもの同士だと、好意を抱いているかのような。
「近いうち、彼女はここを出ていくだろう。
彼女はどこの出なんだい?」
以前彼女に出身を聞いた時、有耶無耶にされたことがある。
家は、ここから近いのだろうか。
「遠かったら、最後の情に車でも出してあげても」
「あいつに家族はおらぬ。家もない。」
「…え?」
家族も、家もない?
「どういうことだい…?」
彼女がここに来たのは、いつのことだったか。
確か……
初めて彼女と会った時を思い出す。
彼女は……
「加賀のなまりだった…」
じゃあ、加賀を制圧した時に、秀吉が見初めたのか?
「ああ、そうだ。あいつは前田の屋敷から連れてきた。あの屋敷での唯一の生き残りだ。」