第4章 犠牲
「ほら。そういうところだ。
そういう所が鬱陶しいんだ。」
思ってもいない真っ赤な嘘となると、不思議なくらい口は回る。
「嘘ですよね…、半兵衛様?」
「……嘘じゃないさ。」
「嘘ですよね……ねぇ…」
ふるふると震える彼女の唇。
彼女の白い歯がその唇を噛んだ。
「さぁ、出ていきたまえ。君はもうここにいていい人間じゃないんだ。」
しばらく彼女はうつむいていた。
もう一度出ていくように言いかけた時、彼女が立ち上がる。
下を向いて、そのまま戸まで歩いていく。
その足取りがしっかりしていて戸惑う。
戸にかけた手すら、震えていなかった。
「は……、いいえ、竹中殿。」
竹中殿。
完全に他人行儀な呼び方だ。
「竹中殿。あなたは、お勝手なお方です。」
彼女はそう言って、出ていった。