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糸車 2

第4章 犠牲


「ほら。そういうところだ。
そういう所が鬱陶しいんだ。」

思ってもいない真っ赤な嘘となると、不思議なくらい口は回る。

「嘘ですよね…、半兵衛様?」

「……嘘じゃないさ。」

「嘘ですよね……ねぇ…」

ふるふると震える彼女の唇。
彼女の白い歯がその唇を噛んだ。

「さぁ、出ていきたまえ。君はもうここにいていい人間じゃないんだ。」

しばらく彼女はうつむいていた。

もう一度出ていくように言いかけた時、彼女が立ち上がる。
下を向いて、そのまま戸まで歩いていく。

その足取りがしっかりしていて戸惑う。
戸にかけた手すら、震えていなかった。

「は……、いいえ、竹中殿。」

竹中殿。
完全に他人行儀な呼び方だ。

「竹中殿。あなたは、お勝手なお方です。」

彼女はそう言って、出ていった。
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