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糸車 2

第4章 犠牲


「…半兵衛様。
私は半兵衛様が何をおっしゃっているのかわかりません。」

「だったらわかるまで何回でも言ってあげるよ。
だから大坂城から」

「私が聞きたいのはそんなことではございません!
どうして、どうして私がこの大坂城から出ていかなくてはならないのですか!?」

秀吉も、驚いた顔をしている。

「半兵衛。貴様どういう風の吹きまわしだ。」

ぼろが出ないよう、完全に表情を取り繕う。
鼓動は信じられないくらい速まっている。

「考えたのさ、秀吉。
やっぱり僕には恋人なんて不要なんだ。」

「…っ!」

彼女が息を呑む。
その目は見開かれ、僕のことを凝視していた。

「…半兵衛様、そんな。」

「悪いね。
でも君は足手まといだ。」

グサグサと言葉の刃を突き刺された彼女の目から、ポロリと透明の血が落ちる。
そのままドサリと床に座り込んだ。

「…したのに。」


「…なんだって?」

「ゆびきり…したのに。」

「ゆびきり?」

「お忘れですか?
ずっと一緒って…ゆびきり、したのに。」

たった昨日のこと。

頼むから、僕を憎んでくれ。
もう僕への愛情なんか忘れてくれ。
そんな約束、忘れてくれ。

「そんな約束、ただの口約束だろう?」

もう、どこまでも最低な男になるしかない。
嘘だよ、そんなことない。
大好きだ。
そういって抱きしめてやりたい。
でも、出来ないんだ。

「…ひどい。」


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