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糸車 2

第4章 犠牲


どうしようもないじゃないか。
どっちをとっても、同じかつ最悪な結末。

そもそも秀吉のことなんか斬れる訳が無い。
だからといって、彼女を見殺しにすることも、僕が死ぬことも避けなくてはならない。

八方塞がりだ。

そう絶望しかけた僕に、1つ、考えが浮かぶ。

それは考えついた自分が自分で恐ろしくなるほど、悲しくて残酷な考えだった。
拒もうとしたが、着々と僕の中でその考えが膨らんでいく。

慌てて頭からそんな考えを振り払おうとする。
しかしそうしようとすればするほど、その考えの正当性が、妥当性が、そして、必要性が増していく。
それが唯一の打開策のように思えてくる。

…待ってくれ。
どうして僕はこんなことを思いついてしまった。
こんな方法でしか、僕は秀吉と彼女を、そして自分を守れないのか?
考えろ、何か代替案を。
必死に頭を回転させるが、もうその考えのみが頭にこびりついてしまった。

でも、グダグダしてる暇はない。
だって、彼女が否定するとも思えない。
否定したら、僕に危害が及ぶ。
そんなこと彼女だって察しているだろう。
だったら自分が罪を被ればいいと考えて、肯定するはずだ。

ただ、彼女は知らない。
秀吉が恋人を殺したことを。
だから、僕の恋人である自分が殺されるとまでは恐らく考えていない。

真っ白になった頭が、彼女の笑顔を思い出す。
こんなにも早急に、こんなにも残酷な決断をしなくてはならない日が来るとは思わなかった。

もう一度、代替案を探す。
普段の自分が憎たらしいくらい、僕の頭は回らない。
ああ、これが最善の策だというのか。

頭の中で笑う彼女に、深く謝罪した。
………どうか許してくれ。

僕は重い重い襖を開けた。



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