第4章 犠牲
秀吉の部屋の前。
ここには最近はいい記憶がない。
そっと中の物音に耳をすませる。
二人の話し声が聞こえた。
…安心した。
流血沙汰にはなっていないようだ。
しかし秀吉の声色はいいものではないとすぐにわかる。
彼女の声は、小さいのだろうか、うまく聞き取れない。
僕がここにいるのを知られてはまた厄介なことになりそうだ。
緊急時にはいつでも飛び込めるように構えつつ、中の様子を伺う。
だめだ、会話の一部しか聞き取れない。
「…が、引き止めていたのか。半兵衛を。」
秀吉の怒りに満ちた声。
引き止めた…朝鮮進出のことか。
そうか。
秀吉は、僕のことを彼女が引き止めていると考えたらしい 。