第4章 犠牲
部屋に戻ると、彼女が待ってくれている、なんてことはなかった。
自室だろうか?
そこまで呼びに行くことは気が引けた。
そもそもこんな顔を見られたら、さらに不安にさせるだけだ。
交渉がうまく行かなかったことが丸分かりの顔をしているに違いない。
思い返せば思い返すほどため息が出る。
おそらく、過去最悪の話し合いだった。
秀吉の過去の傷をえぐるなんて、我ながら馬鹿なことをしてしまった。
あの侍女がいなければ…
確かに秀吉はそう言った。
嫌な予感が頭をよぎる。
秀吉が、彼女を手にかけるかもしれない。
実際、彼は一度恋人を殺しているのだから。