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糸車 2

第4章 犠牲


「守りたい、人?」

「ああ、そうだよ。」

「…あの侍女か?」

「そうさ。」

…突然、秀吉の纏う雰囲気が黒くなった気がした。
気のせいか?

「その侍女を、お前は愛している、と。」

…やはり気のせいじゃない。
明らかに刺々しい。

「ああ、愛してい…」


…………あ。
そこまで言いかけて、やっと気づいた。
同時に冷たいものが、頭の中に一気に広がっていく。

そうだった。
秀吉は過去に、想い人を、恋人を。
殺して、いる。

「半兵衛。それが、お前が朝鮮進出を拒む理由か?」

「…そ、それは。」

「その女がいなければ、いいのか?」

まずい。
この流れはまずい。
僕としたことが、思慮不足だった。
あの過去のことに関しては未だに秀吉は未だに激情に駆られる。

「い、いや。違うんだ。秀吉。」

「なにが違うというのだ。」

「彼女のことは、ほんの僅かな理由だよ。
別に彼女がいなくたって、僕は反対したさ。」

自分でも驚くほど声が揺れている。

「なぜ動揺している。」

「そんなことはないさ。
別に今は、ねねのことは関係な」

「黙れ。」

思わず名を出してしまった。
一気に秀吉が不機嫌になったのがわかる。
どんどん自分で墓穴を掘ってしまった。

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