第4章 犠牲
いつもだったら、この時点でどちらかが声を荒げ始める。
しかし僕はなんとか平常心を保つよう努めた。
もう、難しい言葉じゃきっと届かない。
素直に言葉をぶつければいい。
「秀吉、僕はね。
君と出会うまで、自分の人生が分からなかった。
君と会えて、変わったんだ。
そんな君と手に入れたこの国だ。
この国を、僕は守りたい。」
「守る…か。」
「ああ、そうだ。
守ることも、時には強さだ。
僕らには守るべきものがある。」
守るべきもの。
そう口にして、彼女の姿が脳裏をよぎる。
あの細い腕。
彼女だって、守るべきものだ。
彼女は、僕が守らなくてはならない。
「それにね、秀吉。
僕には、守りたい人だっているんだ。」